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TAR ター

 主演:ケイト・ブランシェット。監督:トッド・フィールド。

 あの、ベルリン・フィルハーモニー交響楽団、初の女性主席指揮者という設定のリディア・ター役を演じた、ケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技が、見事だった。アカデミー賞の主演女優賞を取れなかったのは残念。まるで、リディア・ターが実在するかのように、その人生を演じきっていた。

リデァ・ターに、叶わぬ夢などなかった。アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めた後、ベルリン・フィルの首席指揮者に就任、7年を経た今も変わらず活躍する一方、作曲者としての才能も発揮し、エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞のすべてを制した。師バーンスタインと同じくマーラーを愛し、ベルリン・フィルで唯一録音を果たせていない交響曲第5番を、遂に来月ライブ録音し発売する予定だ。加えて、自伝の出版も控えている。公式サイトより)

 

 そのように、飛ぶ鳥を落とす勢いのターなのだけれど、そのカリスマ性ゆえになのか、独裁者的な自意識のためなのか、完璧であったはずの人生にほころびが生じ始めて、それがどんどん広がっていき、…というお話。2時間半という長い映画だけれど、展開の早くなる後半はグイグイ引き込まれて、眠気も覚めて見入っていた。謎が回収されないまま終わってしまっているとか、ラストはどういうことだとか、まぁ、評価は分かれてもいるようだけれど、終わってみれば、面白かった。う〜ん、もう一回、はじめから注意して良く見てみたい、かな。

 始まりが終わりで、終わりが始まり、の映画だった。