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インディアンの箴言

 引っ越しをすることになって、ただ今極力、断捨離を決行中。そしてその一番の難関が、本をどうするかという問題。簡単に手放してしまえばいいのだろうけれど、気持ちがそれについて行けない。読んだ本でしょって、思うだろうけれど、読んだ本だろうかってのがいっぱいあって、・・・えっ、そこか。

 この、笹本稜平の山岳小説も、どんな話だっけと、読み返してしまった。所々思い出すんだけれど、(だからきっと読んでいるんだけれど、)最後、どうなるんだっけと、(思い出せなくて)気になって、結局しっかり読んでしまった。面白かったから、いいんだけれど。それで、この本は捨てないでとっておこうかなって気に、なってしまう。きっとまた10年経って、どんな内容だっけと読み返して、新鮮な気分で感動するのだろうから。

 

 物語の中にアサバスカ・インディアンの長老、ワイズマンという人物が登場するのだけれど、道に迷う者へ語りかける彼の言葉が、さすがに心に染みる。忘れないように、ちょっとメモしておこうと思った。

 

 他人を許せなくては自分も許せない。自分を許せない人間には魂の安らぐ場所がない。

 

 人を愛するいちばんいいやり方は、人から愛されようと思わないことだ。人から愛されたがっている人間は、いつも誰かと取り引きしていて、与えた愛を上回る対価を相手に要求する。世の中の人間はほとんどがそうで、だから誰もが妬み、憎み、いがみ合う。

 

 恐怖でもいい。怒りでも、絶望でもいい。人が逃れようもなくこの世の現実に直面してネガティブな感情にとらわれているとき、たぶん誰もが自分を幸福だとは感じないだろう。しかしあとで思い返してみるといい。そうやって遮二無二現実と格闘していたときの自分がいかに充実した時間を生きていたかを。それが人生の宝と言うに値するものだということを。

 

 君がこの世に生まれたことに意味を与えられるのは君だけだよ。神はそんなふうに我々を創った。その意味というのは、言葉によって定義できるものでもなければ、自分のなかに後生大事にしまい込めるものでもない。求めなければいつでもここにある。求めたとたんに見失う。

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コメント: 2
  • #1

    美月 (火曜日, 08 11月 2022 10:22)

    読んでみたいと思いました。
    最後の言葉が深く心に響きます。

  • #2

    山ヤ (火曜日, 08 11月 2022 22:19)

    マッキンリー山が舞台の山岳小説なんだけれど、実際にマッキンリーに行ったことがあれば、もっとワクワクして読めるよ。マッキンリーは、見に行くだけでも価値あり。あんな大きなものは、見たことない。