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イヴォン・シュイナードの考えること

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードとその家族は、49年の歴史を持つ同社の所有権を非営利団体らに譲渡し、パタゴニアの将来の利益を気候変動対策に充てると9月14日に宣言した。」

 色んなニュースが飛び交う中で、ちょっと「そうなんだ」と思ったニュースだった。約4300億円相当の資産を譲渡することになるのだとか。今、83歳のシュイナードは、パソコンも携帯電話も使っていないそうなのだけれど、それはそれで、既にもう充分なお金持ちだから、出来ることなのだろうか。

 手元に、石川直樹の『全ての装備を知恵に置き換えること』という本があったので、それをパラパラと読み返してみた。冒頭に、シュイナードのこんな言葉が紹介されている。

 

 冒険というものの究極は自分の身体一つでおこなうことだと思っている。もしある人がはじめてクライミングをやりはじめたら、周りにある装備を全て使うだろう。

 私にとっての究極は何の道具も使わない「ソロクライミング」なんだよ。チョークもクライミングシューズもガイドブックも……。裸で登るのが究極さ。きみが興味をもっている古代の航海術と同じように、全ての装備を知恵に置き換えること。それが到達点だと思っている。私はそれを完全に信じてやまない。

 

 レベルの高い難しいクライミングをいくつもこなした後、何がしたいかを問われてある男は言ったそうだ。歩きたい、と。未知の方角へずっといつまでも歩いていきたい、そう言ったんだ。

 

 最後は何も持たないで(知恵だけをもって)、というのには確かに憧れるけれど、俗人の自分にはなかなか辿り着けない境地だな。

 今、引っ越すことになって、身の周りのもの(特に大量の本)を手放さなくてはならないのだけれど、それがなかなか難しい。