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今年読んだ本

 『聖なるズー』濱野ちひろ:著 集英社文庫

 先日、学級新聞を作ったときに「今年読んだ本」として取り上げたんだけれど、はたしてこの本を、よい子の皆さんに紹介して良かったのかどうなのか。それくらい衝撃的な作品だった。

 犬や馬をパートナーとする動物性愛者を取材したノンフィクション作品。こんな世界があるのか、という驚きから、こういう世界もありなのか、という戸惑い、でもなく、海容とも違う、何か不思議な感覚を味わった。人間として生きること以前に、私たちはまず、生きものとして、ある、そういうことなのかな。に、しても、だな。

 ただただ、取材を進めた著者の行動力には感服。凄いと思った。

 

 図書館から借りて単行本で読んだのだけれど、文庫本になったんだな。手に入れて、手元に置いてもいいかも。自分の生きている世界が、本当に限られた世界であり、知らない世界はまだまだたくさんあるのだという思いを込めて。

 『夏物語』川上未映子:著 文春文庫

 文庫本にしては厚い本なのだけれど、夏休みにちょっと読みごたえのある本をと思って、買ったのだった。第一部は、なんかわりと淡々と話が進んで、引き込まれるという感じはしなかったけれど、その後の展開はグイグイって感じで、いろいろなことを考えさせられたし、面白かった。第一部は、著者の『乳と卵』の続編になっているということを後から知って、そちらも読んでおくべきか、と思う。

 こんなことを書くのはへんなのだけれど、女性として読めば、また違った思いなんだろうなぁって思っちゃった。hontoの、「みんなのレビュー」を読んでいても、思い入れの籠もったレビューがあって、そうそう、これはそういう本だな、と思った。

 『三体』劉慈欣:著 早川書房

 去年、最初の『三体』を読んで、今年はⅡ、Ⅲを読み終えて、もうなんだかずっと『三体』を読んでいた感覚。ⅡとⅢは、それぞれ上・下に分かれていたから、Ⅲの下を読み終えて、その達成感は半端なかった。と言うかそれは、この小説に描かれた時間が、とてつもなく膨大だったせいもあるかも。人生100年時代なんて言われるけれど、そんなの本当に、ちっぽけなちっぽけな時間に過ぎない。私たちは何も成し遂げられないし、私たちは宇宙の中のちっぽけな塵、のようなものでしかない、かもしれない。それでも私たちはこの宇宙に生きていて、ささやかだけれど、生きているんだ!と何かを発信し続けるものなのだと、わけもわからずそんなことを思った。