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百年と一日

 学校の図書館から借りてきて、柴崎友香『百年と一日』を読んだ。人間ドラマの様々な場面を切り取った短編集になっている。短編だから、あ、ここで終わっちゃうのかと感じるのもあるし、続きが気になる話もある。時間が遡っていくものだったり、戦争や内戦という設定もあるから、場面設定も様々、と言うより、そういう、時間や場所にとらわれない、不思議な感覚に襲われる。物足りないと思う人もいるかもしれないけれど、いやなかなか良かったよ。

 柴崎友香さんの小説は、何も起こらない日常を描いて秀逸だよね。自分のお薦めは、『わたしがいなかった街で』だな。電車の中で読んでいて、涙を流した覚えがある。

 

 ところで、この「百年と一日」(筑摩書房)をAmazonで検索していて、装丁がほとんど同じ本があることを発見した。こういうのは、ありなのか。奥泉光の『地の鳥 天の魚群』(幻戯書房)という本だ。奥泉氏も、芥川賞作家だった。ちょっと興味が出て、こちらも読みたくなった。共通して装画に使われているのは、長谷川潾二郎の「紙袋」という絵だそうだ。