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この星の光の地図を写す

 東京オペラシティ アートギャラリーで、石川直樹の個展「この星の光の地図を写す」を見てきた。つい、石川君、って思ってしまうけれど、もう40過ぎなんだね。

 写真展だったけれど、作品の撮影可ということで、それならカメラを持ってくれば良かったと後悔する。しかし幸い、鞄の中にはつい最近手に入れたケータイがあり、それでシャカシャカ撮影してみた。(さらにしかし、扱いに不慣れなもので、あとでよく見るとピンぼけ写真ばかりで、これまたガッカリだった。)

 

 入るとまず、白い世界。デナリや、グリーンランド、北極、南極の写真などが綺麗に並ぶ。石川君は、二度もデナリに登っているのか。あ、これは入口で配られたリーフレットからの情報。飾られてある写真には、タイトルも説明も添えられていなくて、だから色々想像力を掻き立てながら写真を見つめる。風景を眺めるとき、その風景を説明する看板が立っているなんてことは、そうそうないものね。自分も旅をしている気持ちで、観賞していく。

 

 次の部屋は、赤い部屋。写真集「NEW DIMENSION」からの作品が並ぶ。北海道のフゴッペ洞窟に始まり、南米パタゴニアで終える旅のシリーズ写真ということだ。パタゴニアの洞窟の写真は、無数の手形の写真だ。いや、これは手形というか、岩に手を置いたところに、口に含んだ顔料を吹き付けて型抜きしたものだ。どこかで見たことあるなぁ、と思ったら、このような壁画は、わりと世界各地に見られるのだとか。(ネガティブハンドというそうだ。)角幡唯介さんとの対談の中で、石川さんはこんなことを言っている。

写真のネガフィルムじゃないけど、わざわざ反転画像にしているというのが興味深いですよね。太古のネガティブハンドが、僕は最初の写真だと思っていて、動いているものをそこにとどめておきたい、ほしいものを捕まえたいという人間に備わった根源的な欲望が具現化したものだとおもう。

 なるほど。わかる気がする。

 その隣の部屋は、青い部屋。ポリネシアン・トライアングルの島々を撮った写真集からの作品群と、ニュージーランドに通ったりして出来た「THE VOID」という写真集からの7分ほどの映像作品があった。大きなスクリーンで、ニュージーランドの原生林を見ていると、何だかクラクラと森に吸い込まれていくような気がしたよ。

 その隣は、富士山の部屋。写真は、富士山の形に並べてあったりする。山頂火口の上からの写真はどうやって? と思ったが、それはやっぱり空撮だそうです。

 その隣の部屋は、K2の部屋。ノースフェイスの白いテントが中央にあり、中に入って映像作品が見られる。長くなるようなので、入らなかったけれど、K2の写真は、素敵でした。チラシの写真が、K2だね。凛として、格好が良い。アタックには失敗したということだけれど、挑戦する姿勢もまた、素敵だ。

 その後、長い廊下に、来訪神「MAREBITO」(まれびと)の写真群と、写真集「ARCHIPELAGO」から、日本列島の南北に広がる島々の、暮らしや風景の写真が並ぶ。

 デナリやK2の山岳写真、太古の壁画の写真、島に暮らす人達の写真、等々・・・。どれもが石川直樹の視点から語られる世界で、まさに「この星の光の地図を写す」ように生きてみたいなぁと、自分も思った。

 

 写真展の最後は、石川直樹の部屋。冒険に使われた品々や、愛読書を陳列した本棚などがあり、十分に楽しめる企画だった。

 この石川君、実は知人の親戚に当たる人ということで、いつかお目にかかれる機会はないかなぁ・・・と思ってます。本当に。その時がいずれ来ますように。

 

 

 初台にある、東京オペラシティへ、今回初めて行った。綺麗な所だった。石川君の個展は、3月24日(日)まで。