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バナナの種

 バナナに種があるという話を聞いたのは、どの飲み会の時だったかな。

 今、僕らが食べてるバナナには種はないけれど、それは苗を植えて(挿し木をして)増やしているからだ。だからバナナには種は必要なくなってしまった。

 ただ、バナナはとても病気に弱く、ある時ある場所で、壊滅的な被害が出たことがあったのだとか。そうなるともう、挿し木をして増やすこともできず、その地域ではバナナの栽培を諦めざるを得ないかに思えた。

 でも、バナナには原木というのがどこかにあって、種のできる原木バナナさえ見つければ、再びバナナを増やせるチャンスは残されているのだった。 

 そこで、バナナを絶滅から守るために、バナナの種を探し続ける男が現れた。極まれに種を付けて実がなる貴重な「種付きバナナ」との千載一遇の出会いを掴もうと、男は、一本一本、皮を剥いては種を調べ、また皮を剥いては種を調べていく・・・・。

 「バナナの種を探すこと」は、見えない宝物を探すことであり、大切にしていないといつか無くなってしまうものを、時々ポケットを開けて確認するような作業であり、なんだかとっても気になることとして、今の、自分の頭の中に刻まれることとなった。