180°SOUTH

 1960年代の初め、イヴォン・シュイナードは評判のいい登山道具を作っていた。初めは趣味でやっていたものだが、やがて仲間を集めて工房を作るまでになる。ある日、友人のダグ・トンプキンスが、南米パタゴニア地方の山に登らないかと、イヴォンを誘いにやってくる。2週間後、二人はサーフボードと登山道具と、旅の記録のための16ミリカメラとを中古のバンに載せ、南米パタゴニアを目指して旅に出たのだった。

 ・・・それから40年の時が流れ、ジェフ・ジョンソンという青年が、イヴォンとダグの旅の記録映像を見て衝撃を受け、自分も彼らの旅を追体験しようと考えた。サーフィンと登山を愛する彼は、メキシコからパタゴニア行きのヨットに乗り込み、パタゴニアのコルコバド山を目指すことにした。しかし出港して1ヶ月が過ぎた頃、船はマストが折れるというアクシデントに見舞われてしまう。そこで急遽、近くのイースター島に寄って船を修理することになる。その時ジェフは、島でサーフィンのインストラクターをしているマコヘという女性と知り合う。ようやく修理が終わり、島を出る時にはマコヘもクルーに加わり、一緒にパタゴニアを目指す運びとなり、メキシコを出発してから124日目、ついにパタゴニアへ到着。ジェフは連絡していたイヴォンとも合流した。はたしてジェフ、イヴォン達は、コルコバド山登頂を果たせるのか・・・。

 パタゴニアへの旅ということで、自分の思い入れもひとしおだった。サーフィンの映像も綺麗な映画。後半、イヴォンやダグが、環境問題に触れて説教臭くなっているんじゃないかと感じる人もいるだろうか。けれどそうしたことも、現代人として普通に自分のこととして感じていたいことなのだ。

 イヴォンに言わせれば、「シンプルに暮らすことほど難しいものはない 世の中のほとんどの問題は方向転換すれば解決する 欠陥のあるシステムを維持する必要はない」のだから。

 映画を見ていて、パタゴニアへの旅を実行できるジェフを羨ましく思ったのはもちろんだけれど、同様に、ジェフにインスパイアーを与え、最後はジェフの登山にも同行するイヴォン・シュイナードという人が、とても魅力的に感じ、あぁいう大人になりたいなぁと、思ったのだった。

 クリス・マロイ監督作品。