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大地の芸術祭

8月のお盆は例年どおり家族で岩手で過ごした。ただ、帰りは少し早めに岩手を発ち、寄り道して東京に戻ってきた。それは15日から17日で、ちょうど高速道路が渋滞する時と重なって、それはそれはたいへんな思いもしたけれど、大切な夏休みとはなったと思う。

 この駄文は一応、念のための、その暑かった夏の日々の記録。

 15日は午前中に岩手を出た。けれど、昼過ぎから東北自動車道の渋滞につかまる。 この日は福島の岳温泉に宿をとってあるからと思っていたのが油断だった。・・・結局、夜の7時過ぎに宿に到着。ふ〜う、もうへとへと。それでも温かく迎えてくれた宿の方に感謝。ルーもよく頑張ったよね。すぐにおいしい食事をいただき、あとは温泉へ。でも本当は、もう少しゆっくりしたかったかな・・・。

 16日。さて出発だよ。この日も午前中は高速を走る。東北道から磐越、ちょっと関越を経由した後、高速を下りて、さらにひたすら目的地へ向け国道を走る。

 僕らの目的地は、「大地の芸術祭」が開催されている越後妻有地域でも、西の方の津南町だ。そこで知り合いが、「やまもじプロジェクト」という作品?を出展しているというのだ。さてさて、「やまもじプロジェクト」とは、いったい何だ!?

 「大地の芸術祭」は、越後妻有を舞台に10年前から始まった、三年に一度の芸術のお祭りだ。十日町と津南町に跨る芸術祭の規模は広大だ。集落の、棚田の、森の中のあちこちに、芸術祭参加作品が展示されていて、その数は約370作品とか。

 この春、同じ職場(正確には同じじゃないんだけれど、まぁ近い職場)だった滝沢達史さんという方が、突然、「芸術家になります。」と言って職場を辞めてしまったので吃驚したことがあった。実は滝沢さんにとっては突然でも何でもなく、この夏の芸術祭への準備を整えるための、一つのステップに過ぎなかったわけだけれど、周りの僕らはずいぶん驚かされたものだった。

 その滝沢さんが、何をなさんとしているのかを、見に行こうと思ったのだ。

 迷わず、津南町のマウンテンパークに着く。

 

 滝沢さんの仲間っぽい人がいたので挨拶する。なんと、滝沢さんは、今日はこちらには戻らないとか。ガ〜ン。アポなしだとこれだ。仕方ない。でもその「やまもじプロジェクト」の人が、少しお話ししてくれて、かき氷もご馳走してくれた。ありがとうございました。僕らは、白布を購入し、願い事を書き込む。・・・そう、滝沢さんの「やまもじプロジェクト」とは、願い事の書かれた白布を1万枚、1万人から集めて繋げ、夏のスキーゲレンデに巨大な文字を作るという計画なのだ。(そして9月には、山文字送りとして燃やしてしまうとか。)山に浮かぶ文字は、ずばり、「山」。・・・直球勝負で、いいじゃないですか。

 願い事を書き終えて、今度はそれを、取り付けに行く。山の上だから、眺めもよくて、気持ちいいよ。これを燃やしちゃうんだって、もったいない気もするね。けれどそうやって、パッと燃やしてしまうところにまた、意味があるんだろうなぁ・・・。

 

 マウンテンパークを後にした僕らは一路、本日の宿へ向かう。秋川郷の入口にある、結東温泉「かたくりの宿」だ。ここは、廃校になった小学校の校舎を改装して温泉宿にした施設だ。なかなか小綺麗な宿で、他に何もないけれど、そこがまた良かった。「大地の芸術祭」には廃校プロジェクトというのあって、廃校を美術館やギャラリーに、あるいは宿泊施設にと再生再利用する取り組みが行われている。

 「かたくりの宿」には、僕らの他にも子ども連れの家族が泊まっていて、学校にはやっぱり、子どもの声や姿が一番似合っているなぁと思った。

 そして17日。宿の人から「ゆれる」という映画のロケ地で有名にもなった見倉橋という吊り橋がすぐ近くにあるから、ぜひ行ってみてくださいと言われて、行ってみる。その、渓谷へ下りていく、何とも言えない山道が、ネパールみたいだねぇと、カエと二人で同じことを思ったりした。

 見倉橋は、なるほど綺麗な吊り橋だった。ただ、特にスリルはなかったかな。ルーもすたすた歩いていたし。ほどよい長さだったからか。

 帰りがけに、もうイベントは終わってしまっているとわかっていながら、ひまわり広場に寄ってみた。

 駐車場はガランとし、テントの解体作業などが行われていたので、向日葵ももしかしたら刈り取られたりしちゃうの?と一瞬思ったが、・・・あ、あったあった。50万本の向日葵だって言うからね、一夜にして刈り取ることなんて、そりゃできないでしょう。

 向日葵をバックに、一夏の記念撮影。大人になってしまったら、もう思い出さない夏かもしれないけれど、父さんにとっては、大切な夏休みとなりましたとさ。

 おまけ。ルーの選んだお土産。マユビト