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流星ワゴン

 重松清・著。講談社。「死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして──自分と同い年の父親に出逢った。時空を越えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか──?」

 裏表紙のこんな文句に誘われて、文庫本を手に取った。そして自分のこととも重ね合わせて、まるで自分も流星ワゴン号に同乗している気になって、ぐいぐい引き込まれながら読み進めた。・・・人生の岐路ってどこだったろうと考えてみたり、自分と父親との関係のことを想ったり・・・。

 読後に感想などを話しながら、頼りない言葉を吐いていると、ペチペチと頬を叩いてくれる人がいた。そうだよなぁ、どんなに考えても、人生はやり直せない。てか、やり直すものではなくて前へと進んでいくもの、自分で築いていくものなんだ。そんな当たり前のことを、改めて気付かせてくれる物語でもあった。

「本の雑誌編集部が選ぶ年間ベスト10」で、2002年度のベスト1に選ばれた本。さすがに傑作だった。今回は講談社文庫版で読んだ。