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「氷壁」評

 NHKの土曜ドラマ「氷壁」がこの間の回で終わったので、あちこちでその評判を見て回ってみると、・・・ふむふむ、あれはどうもよろしくないよ、という意見もボチボチあるね。

 まず、井上靖の原作と、まったく違うじゃないか! という指摘が多いのかな。実は俺は井上靖の本を読んでないからね、何も語れないし、(かつての、前穂でのザイル切断事件のことは聞いて知ってるけれど。)だから単純にNHKドラマを楽しめた口です。井上靖のファンにしてみれば、思い入れのあるタイトルだろうから、あまりいじられたくはなかったのかもね。

 以前、TBSのドラマで「人間失格」というのがあって、そのタイトルが、太宰治の遺族からの抗議で「人間・失格」になり副題も付いたってことがあったっけ。でもあのドラマは、原作とか原案に太宰の作品を借りたのではなく、内容がまったく違うものだった。それ故の抗議だった。ところで、そもそも本や雑誌なんかのタイトルには、法律上の著作権はないのだとか。ふ〜ん。「原案、井上靖『氷壁』」と表示したNHKは、むしろ親切と言うことか。(もちろん、原作を利用して視聴者の興味関心を惹き付けたわけではあるけれど。)

 もうひとつ意見が多かったのが、男にだらしない(?)美那子(鶴田真由)って、何なんだぁ〜というものだったかな。ふ〜ん。・・・これまた、毎回欠かさずしっかり見ていたわけではないから何とも言えないのだけれど、最終回だけを見る限りでは、美那子の生き方はあれしかなかったのでは?って思うんだ。 街の中で、車道を挟んで棒振りのアルバイトをしている奥寺(玉木宏)を見てしまった美那子のシーンになった時に、あぁ、かの女は別れを決意するんだなって俺は思ったよ。愛しているからこそ、そばにはいられないってことも、時にはあるのでは?・・・よくわかんないけど。奥寺は、逆に「山男が本気で人を愛したら、山をやめる。」というようなことも言っていたけれど。でも、美那子は、山を愛している山男を、愛してたんだよね。・・・。というような議論を、家ではしました。はい。

 結局、NHKさんとしては、ドラマの中では「ただの悪人は誰一人として描かなかった」とか。ふ〜ん、なるほどね。でも、一番大人だったのが、若い男に走った妻のことを、玄関に鍵もかけずにただ黙ってひたすら待ち続けていた八代(石坂浩二)だったよね。奥寺役の玉木宏と北沢役の山本太郎とは、最近頻繁にNECのコマーシャルで一緒に見かけるもんだから、あれれ?って思ってしまうね。はは。大人げないのは、NEC? NHK? それとも俺か。