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山と恋人と、どっちが大事なんですか。

 ちょっと前に、つきあい始めた人のことを報告していた飲み会で、友人のF原くんに、そう言われた。

 F原くんは俺より少し年下ではあるけれど、数年前に結婚し、可愛い娘さんもできて一児のパパにもなった。坂本龍馬を尊敬し、死ぬ時には前のめりで、なんて言ってはいるが、誰が見てもよき夫であり、頼もしい父親だ。そのF原くんに、そう訊かれてしまった。・・・・。どういう経緯でそういうことになったかというと、実はこの夏、一ヶ月ちょっとの長い一人旅(山行)を計画していると話したからだった。飲み会の席にいらしたT島先生からも、「平井さん、それは甘えだよ。」と、きついお言葉をいただいたのだった。・・・・。

 甘え、ていると、自分でも思います。はい。狡く言うと、甘えさせてもらえる人を、パートナーに選んだと言うか・・・。でも先日、「留守番、よろしく。」と軽い気持ちで言ってしまったら、彼女の目からポロポロと涙が溢れそうになって、ビックリした。・・・   あ”〜〜、どう考えてもひどい男だぁ、俺って。

 それでもやっぱり、出かけていくんです、俺ってば。(カエちゃん、ちょっとの間、待っていてください。)それは、夢を追いかけるとかそういうことじゃぁなくて、今はそうやって生きるのが、現実の自分(自分の現実)だと思うから。

 

 F原くん、今同じ質問を尋ねられたら、俺はこう答えるよ。「山も恋人も、どっちも大事。」同じようにどっちも、じゃぁなくて、それはやっぱり、比べられないよ。俺は欲張りだから、どっちも大切で、失いたくはない。