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永遠の仔

 天童荒太・著。幻冬舎文庫。以前、母さんに「あんたもこういう小説でも読みなさい。」と言われたことがあったのを思い出した。読み進めながら、母さんはどういう思いであの時あぁ言っていたのかなぁと、ふと思ったりした。

 読みごたえのある、名作だった。読了した時、実はアラスカ鉄道の座席にいたのだけれど、ボロボロと泣いてしまっていたりした。・・・。自分もやっぱり、永遠の仔なんだと思う。文庫版の終わりには、筆者、天童荒太氏の丁寧なあとがきがあって、それを最後に読んで、彼の文学への真摯な取り組みにもまた、心打たれた。

 決して爽やかじゃぁない。むしろ、生きることの苦しさを思い知らされる小説と言うべきか。けれど、ぐるんぐるんと渦巻く「生」への衝動に突き動かされて、足を前へと踏み出す勇気の湧いてくる小説だった。