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富士山

 『富士山』田口ランディ・著。文藝春秋。富士山にまつわる四つの短編集。なかなか感動的だった。

 『コンセント』や『アンテナ』を読んでいた時には、(くそぅ~こんな下品なのになんでこんな面白いんだ。)と、田口ランディを少々侮っていたけれど、それがだんだん、彼女の言葉に耳を傾けるようになっていってた。

 なんか、優しいんだよね。子供や若者、弱い者に対する眼差しが。母親だからか? 何か事件(?)があったりすると、この人の意見を聞きたいな、という人の中に入っていたりする。(作家では、大江さんとか、池澤夏樹さんとかも。・・・)

 おっと、富士山の話だ。そうだよね、僕らには、富士山がある。それで、あの山に魅せられて、呼ばれて、あんな苦しいのに、登ってしまうんだ。あとがきで彼女が言っていること、あぁ同じだなって思った。

「きょうは富士山を見たよ、きれいだったよ、と、誰かに伝えたくなる。だいじょうぶだよ、と、励まされる。生きろ、と呼びかけられる。・・・・時代が変わり、文化が変わっても、私たちは、富士山を神々しいと感じる心を持ち続けている。とても素直に、ありがたく富士山を見上げる。それこそが、祈りだと、思うのです。」

 富士山にまだ、登ったことがない人にも、ぜひ読んでみて欲しいな。